Monthly Archives: 7月 2015

マッドマックス 怒りのデス・ロード    西田宣善

 私は最近、東京で見逃した重要な映画を、京都のスクリーンで見てフォローするクセがついている。『バードマン』しかり、『セッション』しかり。そして、今晩の収穫は待望のマッドマックス・シリーズ最新作であった!
 ジョージ・ミラーといえば、『ベイブ』という子ブタが主人公の名作映画を製作したり、『ハッピーフィート』というペンギンが主役のCGアニメーションを監督したかと思えば、オスカーをさらったり、変幻自在の人だ。だが、私にとっては、スピルバーグが製作した『トワイライト・ゾーン』という中途半端なオムニバス映画の最後のエピソードで、飛行機乗客の演出で見る者を恐怖のどん底に陥れた監督として語り継がれる人だ。
 今回の映画の舞台は核戦争後?の地球。あまりにも荒廃して、何が何だかわからなくなっている国の砂漠地帯を舞台にして、トム・ハーディー演じるマックスと、シャーリーズ・セロン演じるヒロインが暴れ回る。というか、ひたすらアクションを続けまくる。
 女性軍団がマックスたちと行動を共にするところから、この映画をフェニミズムの文脈で語ったり、逆に、男の子映画の究極とされたりもする訳だが、私から言わせれば、映画好きと自認する人が、この映画を見ないなんてウソでしょう?ということになる。
 ギターやドラムを欠かせない戦士たち、ミリタリー好きには堪らないクルマたちの疾走や爆発。なかでも音響設計の緻密さと設計には驚嘆した。
 撮影はジョン・シール。ミラーと同じオーストラリア出身の名キャメラマンだ。この人もミラーと同じ70代。激しすぎる爺さんたちである。
 2時間はいささか長いのではないかと思わなくはないが、エンデンィングの渋さを目の当たりにするとそんなことは言ってられなくなる。必見。

映画館に、BoBAさんのポップが! 『HERO』はこんど見ますからね!
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再び『VIRIDIAN ROAD』について     西田宣善

 いま作業中の監督作品を手伝ってもらっている辻豊史さんに、私の旧作『VIRIDIAN ROAD』を限定でYouTubeに上げてもらったので、時々見直している。今日も仕事の合間に見入ってしまった。どうして、こうも何度も見てしまうのだろうか。
 このちょうど製作から30年が経ったこの映画は、当時大した評価も得られなかったし、実際に見ている人すら少ない。しかし、映像作家の今泉秀夫さんは、80年代の8ミリを代表する傑作とまで言ってくださっている。それを鵜呑みするなんてことはないのだが、この映画をまじまじと見ると、製作当時に思い描いた映像がある程度のレベルで実現していることに、今更ながら感心することはある。
 この映画の発想は、当時、代官山にあった同潤会のアパートをテレビで見て、これだ!と思ったところから出発した。その番組では、日本でガウディの建築に近いものを見られる例として、この代官山アパートが取り上げられていた。私は、理想的な住空間を探す話にしようとしていて、街→森→森の中にあるような町といった主人公の歩みを描きたかった。その空間探しの話とガールハント(もはや死語か)が結びつく物語。主人公は彫刻家志望の学生。その後、親戚である東京芸大の教授になった本郷寛先生から、丹念に彫刻の指導を受けた。

 私は文学部の学生だったが、この映画のシナリオを書くために、いくつかの本を読んだ。いちばん刺激を受けたのは大江健三郎の「同時代ゲーム」であったが、台詞には当時よく読んでいた村上春樹の小説の影響を受けている。映画も『ノスタルジア』『風の谷のナウシカ』など、エコロジカル・テーマのものが参考になった。この映画はファンタジー。もしも、幻想文学という言葉にならって「幻想映画」という単語が生まれるのであれば、それをこの映画では使用したいと思う。
 原案協力に名を連ねているのが、ひとりは同級生だった宮口恵子さん。最初は彼女と共同脚本のつもりだったが、コンビは解消。ただ、彼女の卒論テーマだった泉鏡花の「春昼」「春昼後刻」という名編を教えてもらい、これを解体して、村上春樹風の話になって、湖に立つ女の子の語る話のモチーフになった。
 もうひとりは、当時立命館大学の学生で、現在は教授となった細井浩一さん。彼からはエコロジーの話、政治の話をよくされて、何らかの形で映画に生かされていると思う。

 また、私が製作した『piece of mind』に出ていただいた辻啓子さんにシナリオを読んで感想をもらおうと渡したら、私ではわからないからとお父様に見せた。父は作家でアニメ脚本の巨匠、辻真先さん。全く予想もしなかったことだが、辻さんから直筆のお手紙をいただいた。しかも、褒めてくださったのだ。これは映画を撮るうえで、大いに勇気づけられた。

 主題歌を作ろうというのも新しい試みだった。タイトルは「蝸牛の感情線」。
 ゴダール『気狂いピエロ』劇中の「私の感情線」のもじりである。これは、製作者で、撮影監督の牧正之君が実質的に作詞・作曲してくれた。劇中で歌っているのはヒロインの永澤明子さんはいいとして、監督である私も出演して歌っている。監督が主題歌を歌うなんて、最近ではメル・ブルックスの『新サイコ』ぐらいではないかと、当時うそぶいていた。劇中の歌はアカペラだが、エンドタイトルで同じ曲をピアノ編曲して流した。このエンディングは大好きなのだが、劇中歌と同じ曲と思われないようであった。
 この映画を何度も見直すうち、自分でもオリジナル脚本を書いて、監督をしたくなってしまった。いまも何人もの監督と企画を進めているが、私が脚本を執筆することはない。
 だが、再び「幻想映画」のシナリオを書くのだ。それが今のところの目標のひとつである。

映画『VIRIDIAN ROAD』1985年【期間限定公開】

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彫刻家の先生役の中田耕治氏
作家・翻訳家である氏は、当時の私の大学の先生