The Complete Writings of Kenji Mizoguchi


溝口健二著作集
溝口健二│著│ 佐相勉│編│
ゴダール、ベルトルッチ、アンゲロプロス、パゾリーニ、スコセッシ、エリセ、タルコフスキー、ストローブ=ユイレ、ジャームッシュ…
世界を熱狂させた溝口が
生前数々の文章を遺していた

本書は、日本が生んだ世界映画界の巨匠である溝口健二による幻の文章、発言を発掘したものである。著者は「溝口健二・全作品解説」を刊行した溝口研究の第一人者、佐相勉。
溝口が生前に自身の署名で発表した記事を、その発言から重要と思われるものを出来る限りすべて網羅したものである。
この本は編年体で編まれていて、フィルモグラフィ、記事、書誌情報が年代順に収録されているので、溝口が時代を追うに従って、映画監督としていかに変化していったか、その時代にどんなことを考えていたのかがよくわかる。

溝口という監督のとても不思議なところは、日本でよりも海外の方が有名で、映画関係者にもよく知られているところである。研究論文なども海外での方が圧倒的に多い。ただ、海外の研究者が溝口作品のスタイルやショット分析を中心としているのに対し、この本は新しい視点を導入することを狙っている。
溝口の原テキストを読むことで、新たな溝口像を発見していただけるものと確信する。

この本が、若い映画作家や映画研究者に読まれること、日本国内はもとより、英語版をはじめとする海外版で発行されることを期待したい。

【編者】佐相 勉
1948年、横浜に生まれる。著書に『1923溝口健二「血と霊」』(筑摩書房、1991)、溝口作品を第1作から詳細に解説した『溝口健二・全作品解説』(近代文芸社、2001~)は現在9巻(2012)『滝の白糸』までの項が刊行されている。編書に『映画読本溝口健二』(フィルムアート社、1997)、論文に「喜劇監督溝口健二」(『ユリイカ』1992年10月号)、「溝口健二・失われたフィルムが語るもの」(『NFCニューズレター』第69号、2006)がある。2001年、「溝口健二―トーキーへの挑戦」にて京都映画祭第3回京都映画文化賞を受賞。溝口サイレント期の失われた映画についての論考、解説を執筆することが多いが、その研究は溝口の全時代に及んでいる。
2015年4月
「映画音響論 溝口健二映画を聴く」著者、
長門洋平トークショー(大阪)開催。
書籍『溝口健二著作集』特別予告編(10分06秒)

【著者】溝口健二

1898年東京に生まれ、1956年京都に没する。

1923年に第一作を発表してから1956年まで90本の作品を監督。サイレント時代の1920年代には、新派・表現主義(『血と霊』)、翻案文芸物(『霧の港』)、活劇・喜劇(『金』)、下町情話(『紙人形春の囁き』『日本橋』)、傾向映画(『都会交響楽』)など、多様なジャンルに挑戦し、1930年代には明治物(『滝の白糸』『神風連』『折鶴お千』)を連続して手がける。アメリカ、ドイツ、フランス、ソヴィエトなどの外国映画の新しいテクニックを貪欲に吸収しながら、日本的美の映画的表現に尽力する。
トーキーの意義をいち早く認識し、『ふるさと』(1930)で音と映像の非同時的使用という先駆的試みを行い、『浪華悲歌』『祇園の姉妹』(1936)、『愛怨峡』(1937)、『残菊物語』(1939)、『元禄忠臣蔵』(1941、42)において、流麗なカメラワークを伴う「長回し」と、引いたカメラによる奥行きの深い縦の構図を特色とする独自の映像世界を確立する。戦後は『西鶴一代女』(1952)、『雨月物語』(1953)、『山椒大夫』(1954)で3年連続ヴェネチア国際映画祭で受賞し、〝世界のミゾグチ〟となる。
また、『近松物語』(1954)や『赤線地帯』(1956)に見られる斬新な音楽と音の創造も注目に価する。

溝口健二著作集


溝口健二著作集
溝口健二│著│
佐相勉│編│

発行:オムロ
発売:キネマ旬報社
四六版 448ページ
定価:2800円+税
全国書店 AMAZONなどにて発売中!